MATSUNOKI

読み漁った本の書評など

『進化心理学入門』ジョン・H・カートライト

邦題は『進化心理学入門』となっているが、

原題は"EVOLUTIONARY EXPLANATIONS OF HUMAN BEHAVIOR"

直訳すれば「人間行動の進化的説明」だろうか。

邦題通り入門的位置付けの本書だが、

一読して東京大学出版会から出ている『進化と人間行動』の簡略版という印象だ。

 

以下章の構成

第1章 進化 自然淘汰と適応

第2章 2つの性による繁殖

第3章 性淘汰

第4章 人間の性を解明する

第5章 心の原型 適応反応としての恐怖と不安

第6章 心の病を進化から説明する

第7章 脳の大きさの進化

第8章 知能の進化

 

第1章

ダーウィンの生命の輪(本書をもとに筆者作成)

何千、何万世代もの個体の誕生と死が、生き残りの程度の違いを通して、漸次的な変化をもたらす。その結果、新たな種がしだいに形成され、適応が生じる。適応は進化心理学にとって鍵となる概念である。

  • ここでカートライトは以下のように記述する。筆者は「種の定義」については論争があると読んだことがあり、はっきりと言い切っていることに少し疑問符がついたが、入門書として教科書的に書くのが正なのかもしれない。著者にもその認識があるのか「まったくの〜」という言葉が付いているのであろうか。

種は、まったく人為的な概念というわけではない。というのは、有性生殖の場合、同種のメンバーなら、互いに交配して生殖能力のある子を産むことができ、これが種の定義だからである。

cf. 生物の種とは何か - 日経サイエンス(2008年9月)

 

  • 章の最後に、この手の本でよく出てくる印象の「至近的説明」と「究極的説明」(=至近要因と究極要因)の区別の重要さに触れている。ケーススタディーとして「インセスト回避」が示される。

「なぜリンゴは甘いか?」

(中略)、(生化学者、神経生物学者の説明では)なぜヒトはリンゴを甘く感じるのに、ほかの多くの動物(ネコとか)はおそらくそうは感じないのかを説明できない。

生化学者と神経生物学者の説明は、至近的説明であり、至近的なメカニズムを明らかにしている。

甘さの究極的説明-機能的説明とも呼ばれる(中略)-をするためには私たちはさらに掘り下げて、進化心理学に頼る必要がある。

ティンバーゲンの4つのなぜ(筆者作成)

cf.ティンバーゲンの4つのなぜ - Wikipedia

 

参考図書